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    ラギヨイ・アチントヤ(3) ~宇佐見若葉 からの続き
    http://namiokasougo.blog.shinobi.jp/Entry/157/


    ラギヨイ・アチントヤ(4) ~九日旭


     珍しく夕梨に呼び出された。バイト料が入ったのでおごってくれるらしい。
    大学内の学生食堂で。よく考えると大可堂では、宇佐見も含めて
    焼肉(鍋から変更)を食い散らかしているので、これ以上何かを受け取るのも
    悪い気はするが、大学内部に入れるという好奇心に負けて、
    素直に好意を受け入れることにした。丁度、小腹も空いてることだし。


     俺の通う高校と夕梨の通う大学は、自転車で15分程度の距離にあった。
    高校だと生徒・教職員の学校関係者以外の出入りは厳重にチェックされるが、
    夕梨の大学はオープンキャンパスで、夕方になれば一般人も通行できた。
     6限が終わり、清掃、HR(ホームルーム)の終了後、帰宅部の俺は
    いそいそと教室を出て行こうとしたら、それ以上にそわそわしている
    宇佐見が入口で待ち構えていた。


    若葉「いやー、今日は蒼天晴海の絶好の雲日和ですな。
       土成くんも行くんでしょ。スケッチに」

    首里「悪りい、今日、用事が出来たから、今日はなし」


    何処に行くのかと聞かれるかと思っていたが、「あ、そうなんだ、じゃーね」
    とあっさり解放された。まー、初夏特有の入道雲が天高くそびえているので、
    俺も、夕梨との約束がなければ、宇佐見について行きたいところだが、
    まー、今日は、夕梨との約束を優先させよう。
    学食での食事なら1時間程度で済むだろうし、宇佐見が行ったのは、
    夕梨の下宿先でもある谺神社。小高い丘の上の頂にあり見晴らしがいいので、
    雲好きの宇佐見は勿論、俺のお気に入りのスケッチポイントでもある。
    さてと、あれこれ考えるのは俺の悪い癖、さっさと自転車に乗って出掛けよう。


    偶然にも信号に引っかかる事もなく、ノンストップで大学に着いた。
    待ち合わせ場所は学内図書館前の駐輪場。時刻は15時25分。
    待ちあわせた時間は15時半なので、後5分ある。その辺をぶらつく。
    主婦や園児も通行しているが、やはり夏だというのに冬服の詰襟の学生服は
    目立つらしい。勿論、先月衣替えは行われたが、
    俺は、ある事情で夏服にはしたくないのだ。
    幸い汗はかきにくい体質なので助かってはいるが、
    早いトコ夏休みに入ってくれないかと願ってもいる。





    そうこうしていると、声をかけられた。夕梨と同じ合唱部所属の女子大生3人に。
    こっちは、夕梨達が行なった合唱コンサートで挨拶した記憶しかなく、
    名前すら思い浮かばないが、向こうは夕梨の写メで、俺の顔を見慣れているらしく、
    「うわー、本当に冬服なんだ」「暑くない?」とか聞いてくる。
    それらを適当に相槌打ってやり過ごし、こっちの知りたい質問をしてみる。

    つまり、夕梨は何をしているのか?と。時間は15時35分になろうとしていた。
    別に5分の遅刻に腹を立てているのではなく、あの時間厳守の夕梨にしては珍しいので、
    気になったからである。すると、女子大生たちは互いの顔を見合わせて、苦笑いを浮かべていた。
    それを見た俺が?顔を浮かべていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
    勿論、夕梨の声ではあるが、俺に対して呼びかけられた訳ではなく、
    ましてや、目の前にいる女子大生達にでもなかった。
    振り向いてみると、長身で金髪・浅黒の男に付きまとわれ、それに対して語気を荒げていた。


    旭


    要するに困っているわけだから、助けに行こうとしたら、女子大生達に止められた。
    相手が悪いと。相手の男の名は、九日旭(きゅうび・あさひ)。
    一見、日本名ではあるが、インドからの留学生らしい。
    何でもマハラジャの嫡子らしく、大変な大金持ちなのだとか。
    日本にも幾つかの企業やホテルに出資しているらしい。

    まー、そんな素性はどうでもいいのだが、そいつが夕梨に求婚しようとしているというのだ。
    勿論、夕梨とは単なる家庭教師と生徒の関係である俺には関係ないことだが、
    アイツには借りがある。それに夕梨には想い人がいるのだ。決して報われない相手ではあるが。
    というわけで、黙って見てるわけにはいかない。駆け出そうとしたら、車が走りこんできた。
    そして、拉致とは言わないまでも強引な方法で連れ去って行ってしまった。
    乗車間際、俺と目が合った夕梨が言霊を飛ばしてきた。「ごめんね」と。

    さて、どうしようか。送迎車のおかげで行き先は分かった。
    車体に「クエスト・バーラト・ホテル」と書かれていたからだ。
    バーラトはヒンディー語でインド。
    ついでに言えば、クエスト・バーラトはQBと読みかえれる。
    すなわち、QBは九日…だと思うのだが、行ってみれば分かるか。

    どうしよう…とか言ってる女子大生をスルーし、自転車にまたがった時、
    聞き覚えのある声が聞こえてきた。無論、夕梨ではない。


    ra3


    若葉「土成くーん、あー、いたいた。ハーハーハー、夕梨さんからの伝言」

    首里「いろいろ聞きたいことはあるが、夕梨が何だって?」

    若葉「土成くんに無茶させないで…だって。どーゆーこと?」


    高校から徒歩15分の宇佐見は制服から私服に着替えていたまでは分かるが、
    何で一輪車? 後、目の前にいた俺には言霊とはいえ、一言しか残さなかったのに、
    全くの部外者だったはずの宇佐見の方が何故、事情通なんだ?
    すると、宇佐見は、その答えをあっさり見せた。


    首里「携帯電話? これが何?」

    若葉「だから、メールだって。ほら。」


    文面には、どうしても断れ切れない用事が出来たから、
    代わりに俺に伝えてくれという内容であった。
    受信時間は15時30分。俺が夕梨を視認する前に宇佐見は知っていたことになる。
    何故、俺に直接送信しなかったかと言えば、俺の携帯はメール着信機能がない通話専用だから。
    なくても困らないと思っていたが、こーゆー時は便利だな。
    つーか、宇佐見は、その内容を俺に電話して伝えればよかったはずだが、
    それでは、止められないと考えて、直接足止めに来たようである。全く正解である。
    まー、宇佐見のご足労には悪いが、それはそれだ。またがった自転車を漕ぎ出そうとする。


    若葉「どうするの?」

    首里「追っかける」

    若葉「って、さっき、走っていった車だよね。もう影も形もないよ」

    首里「行き先は分かってる。クエスト・バーラト・ホテルだ」

    若葉「あー、あそこ。この辺じゃ一番高いんだよね。あのビル。」

    首里「まー、そーゆー訳なんで、折角来てもらって悪いけど、じゃな」

    若葉「あのね。私、一応、土成くん止めるように言われているんだけど」


    と、後部座席に乗ってきた。多少の重みはあるが、大した負担にはならない。
    構わず漕ぎ出す。慌ててしがみつく宇佐見。仕方ないので、一応聞いてみる。


    首里「降りるなら、今のうちだぜ。」

    若葉「いいよ。私も、あのホテル登ってみたいし」

    首里「そっか、じゃ行くぞ」

    若葉「あ、ちょっと待って。(パシャリ)はい、いいよ」


    若葉


    そう言って、後ろでゴソゴソやっている。
    今は何もないが、先ほどQBホテルの送迎車が止まっていた場所である。
    そこをポラロイドカメラで撮影し、感光した写真を例のカメラで見直している。
    万が一、QBホテルでなかった時、猟犬より鼻が効くというか、
    残留痕跡が見える宇佐見のお世話になるかもしれない。

    QBホテルは大学からは自転車では20分離れたところにあった。
    宇佐見が何も言わないのは、あっているからだろうか?
    それとも、単純にQBホテルに行きたいだけなのか?
    チラッと後ろを見てみると、真剣に写真と道路を見比べている。
    ったく、お人好しめ。ラストスパートとばかりに、ペースをあげた。

    さて、到着はしたのではあるが、ホテルは、らしかぬ様相をかもしだしていた。
    というのも、エントランスにいかついボディーガードが他の客を締め出していたからだ。
    つまり、九日旭が夕梨の為に貸し切ったということなのだろうか。
    試しに正面突破を試みてみるが、165cmの小兵の俺など、
    2m近い番兵共の相手にはならないことは言うまでもなかった。


    若葉「仕方ないね。帰ろうか。けど、展望台レストラン登ってみたかったな」

    首里「折角だから、行こうぜ」

    若葉「どうやって?」


    とりあえず、裏口に回ってみる。隣にはQBホテルほどではないが、企業のビルがあった。
    そして、おあつらえ向きに剥き出しの外部階段が最上階まで、そびえ立っていた。
    問題は内側が、かん抜きで施錠されていたことである。
    それが分かったのは拳が入るか入らないほど格子の間から見えていたからであった。


    若葉「あれ? 土成くん、どこ行ったの?」

    首里「こっちだ。今開ける。(カチャン)」

    若葉「え? いつの間に? というか、どうやって入ったの?
       隙間があるとはいえ、頭入らないよ。これ?」
    首里「それは企業秘密です。つーか、こっから先は一応不法侵入だ。どうする?」

    若葉「私が行くのやめても、土成くんは行くんだよね。じゃあ行く」

    首里「悪いな。なるべく見つからないようにするから」

    若葉「じゃー、サクサク行こう。一応音立てない方がいいよね。」


    そう言った宇佐見は常に年代物のカメラを目に当てるようになった。
    外部階段には、各階の非常口があったが、幸い、それほど人の出入りはなかった。
    それでも数回人の気配を感じた(見えた)宇佐見のおかげで、発見されることを免れたのであったが。
    俺達はズンズン登った。そして屋上に辿り着いた。


    若葉「ひゃー、此処も随分高いけど、向こうは、まだ10階以上あるよ」

    首里「だな。とはいえ、向こうの踊り場が見えるな。」

    若葉「あの、まさかとは思うけど、行くの? 10mは離れているよ」

    首里「そっか、結構あるんだな。目測誤っていた。で、どうする?」

    若葉「よく分かんないけど、土成くん一人でなら行く方法があるなら、
       私は此処で待ってようか?」

    首里「うーん、なー、宇佐見、少し目つぶっててくれるか」

    若葉「ええー? う、うん」(パチリ)

    首里「(シュン) もう、いいぞ。」

    若葉「ふえ? ええっー?? と、飛んだ? 私、飛んだの?」

    首里「企業秘密。さー、行くぞ」

    若葉「うん」


    扉を開け、中に入る。流石に上まで登ってくると、
    エントランスのボディガードみたいな連中はいなかった。
    ホテルの従業員もたった一組のお客の接待のために
    神経を使っているようで、侵入者への配慮は
    各階に数箇所設置された防犯カメラのみであった。


    若葉「夕梨さん、どうしているのかな?」

    首里「飯食ってるんじゃね? 俺も腹減ったな」

    若葉「飴あるよ。はい」

    首里「サンキュー。そのポシェット、何でも出てくるな。」


    漸く、次回は夕梨視点の話。
    ラギヨイ・アチントヤ(5) ~サイレント・ヴォイスに続く。
    http://namiokasougo.blog.shinobi.jp/Entry/167/

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