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       谺夕梨(こだま・ゆうり) 女子大2回生    土成首里(となり・しゅり) 高校2年生


    ラギヨイ・アチントヤ(1)~「谺夕梨先生の霊子論」~からの続き
    http://namiokasougo.blog.shinobi.jp/Entry/121/


    ラギヨイ・アチントヤ(2) ~大いに可なり

    (1)大可堂


    とりあえず授業とやらが終わり、TVをつける。
    そして、せんべい袋を開き、木皿にブチ撒ける。
    夕梨は魔法瓶から茶葉を入れた急須にお湯を注ぎ、
    湯飲み茶碗に茶を入れている。

    時刻は16時を少し過ぎたところ。TVの番組は
    時代劇やら再放送のドラマやバラエティ番組、
    国営放送はニュースや児童向け番組を放送しているだけ。
    特に見たいものはないが、この選択肢ならニュースがマシか?

    こたつ机の真ん中に置かれたせんべいに手を伸ばし、かじる。
    夕梨が茶の入った湯呑み茶碗を俺の目の前に置こうとした時、
    廊下の奥から鐘の音が響き、襖が自動で開く。

    カランカランカラン… ガラッ

    ??「ゆりちゃん、おなかへったー」

    夕梨「てなちゃん、ご苦労さま。お母さんは?」

    首里「よう、マジ子。せんべい食うか」

    ??「いらない。たえちゃん、きょうもおそくなるって、
       すくなちゃんはねてるの」

    夕梨「そっか、じゃー、私が作ろうかな」

    ??「わたしもてつだう」

    夕梨「うん、お願い。首里、店番頼むね」

    ??「おばけ、わんごろうとあそべ」

    夕梨「くれぐれも犬吉くんと仲良くね」

    首里「おう、分かった」

    そう言うと、手児奈は胸に抱いていたヌイグルミみたいに
    大人しい子犬を俺に預け、夕梨に手を引かれ客間から出ていった。




     大可手児奈(おおか・てじな) 5歳        俄雨(ニア・カーマ) ニホンオオカミ


    手児奈というのは、この店「大可堂」のオーナー少婆さんの孫娘である。
    ”てじな”と読む。本当は”てごな”という少女を意味する古語なのだが、
    誰もそうは呼ばない。それは、彼女の能力に由来する。その能力とは…

    ピシャ… 襖が自然に閉まる。別に自動ドアというわけではない。
    俺達が、この部屋を出入りするなら、開け閉めは当然手動だ。つまり…

    ??「少年」

    手児奈の説明も済んでないのに、ややこしいのが口を開く。
    一応説明しておくと、この部屋には俺と手児奈の残していった
    犬ころがいるだけである。とはいえ、この犬、見る人が見れば、
    模様なしのシベリアンハスキーと思うかもしれない。
    というのも、まさか、絶滅したニホンオオカミだとは思わないからだ。
    ともかく、呼びかけられたら、答えておかなければ、後々面倒だ。

    首里「何だよ。駄犬」

    ??「先ほどの授業だが、アチントヤの説明が不十分だと思うのだが」

    首里「アチントヤ=不可思議でサンスクリット語。
       それ以外に何の説明があるんだ?」

    ??「アチントヤがサンスクリット語で、それを漢語にあてはめたのが
       不可思議。さて、不可思議とはどういう意味かね?」

    首里「不思議ってことだろう。いや、待てよ。可の字はどこ行った?
       そーいや、おまえ漢語って言ったか? 不可ってことは
       直訳すると”思議すべからず”で、考えるな…ってことになるのか?」

    ??「我々の日々の生活は大宇宙のことを考えて生活してないだろう?
       つまり、考えても計り知れないので、
       ”それでも大丈夫”な世界を受け入れろということだ」

    首里「要するに、この店”大可堂”の名前でもある”大いに可なり”ってことか」

    ??「それだけではないぞ。この世で最も大きな単位は何かね?」

    首里「無量大数だろう。まー、0をつければ、幾らでも大きな数は作れそうだけど」

    ??「無量とは阿弥陀仏の寿命を現す。(10の68or88乗)
       それは、さておき、その下の単位は何か知ってるかね?」

    首里「恒河沙(こうがしゃ)、阿僧祗(あそうぎ)、那由他(なゆた)、
       あれ? まだ何かあったような」

    ??「恒河沙とはガンジス河の砂のこと(10の52or56乗)。
       阿僧祗は”アサンクヤ”「数えられない」という意味(10の56or64乗)。
       那由他は”ナユタ”、「計りきれない」という意味(10の60or72乗)。
       そして10の64or80乗は不可思議”アチントヤ”」

    首里「ふーん。で、それがどうしたんだ。」

    ??「仏典では、不可説不可説転という単位が最大数ともされるが、
       それもさておき、そろそろ頃あいかな?」

    首里「何をたくらんでるんだ。俄雨のおっさんよ」

    俄雨「いや、何、君達が本当に何があっても大丈夫なのか、
       試してみようかと思ってね」

    首里「ほー、あの頃の俺とは違うぜ。それに、おっさんは、
       霊力を回復できてないから、そんな姿してマジ子の飼い犬やってるんじゃねーのか?」

    俄雨「ハハハ… 君くらいは訳ないが、このなりでは少々手こずる。
       それに、私は君達と言ったはずだがね」

    首里「てめー、まさか」

    そう言ったのも束の間、台所から悲鳴があがる。ヤバイ。
    とっさに俺は耳をふさぐ。家鳴りがする。和式のこの部屋には被害はなかったが、
    台所や廊下では何枚かガラスが割れたようだ。しばらくすると手児奈が泣きだした。

    夕梨のヤツ、何やらかしたんだ? しかし、それを考える余裕はなかった。
    子犬姿の俄雨が、俺の喉元を狙い飛びかかってきたのだ。
    まー、予測はできたことだ。すかさず、せんべいを盾にし、
    その口に蓋をしてやる。案の定、噛み切れないでモゴモゴやってやがる。

    首里「たく、ご主人さまを泣かせるなよ。台所で何しやがったんだ?」

    だが、返事はない。そこらじゅうにぶつかって、せんべいを叩き割り、
    漸く会話可能になったようだ。

    俄雨「パリポリ… なーに、店にいるコウモリを少し操っただけだ。 ガリガキ…」

    この大可堂は表向き古道具・骨董屋であるため、古物が多い。外観は蔵に近いため、
    掃除しきれないところも少なくないため、そんな所にコウモリは住みついていたのでだろう。
    しかし、それを操れるほど回復していたとは、思った以上に回復してやがる。

    首里「話は後だ。とりあえず、怪我してないか見てくる。
       してたら、テメー晩飯にするからな」

    俄雨「それには及ばんよ。2人がやって来たようだ」

    自然に襖が開く。ただ、いつもより乱暴だ。先に飛び込んできた手児奈が
    俄雨に飛び付き、ギュッと抱きしめている。続いて夕梨も入ってきたが、
    何かドレッシング臭い。

    首里「どうしたんだ。それ、つーか、何か割れてけど、怪我はなかったのか?」

    夕梨「あはは、ちょっと、コウモリが台所に入ってきてビックリして叫んじゃった。
       耳、大丈夫だった? 

    首里「おかげさまでね。とゆーか、そのコウモリが夕飯に並ぶってことはないだろうな?
       それより、そのマヨネーズまみれの服、どうにかしたいんじゃないのか?」

    夕梨「そう、だから、てなちゃんと… あれ? てなちゃんは??
       あちゃー、てなちゃん、犬吉くん抱きしめちゃったのか」

    因果応報、自業自得というべきか、わんごろう、犬吉と各人が銘々好きな呼び名で呼ぶ
    元 俄雨は現ご主人様と一緒にマヨネーズの和え物になっていた。
    なまじ犬の姿であるがゆえに、酢の匂いはこたえるらしい。
    目を回しグロッキー…、ざまあみろである。

    首里「さっさと、3人で風呂入ってこいよ。ガラスの後始末はやっとくから」

    夕梨「そうね、犬吉くんも洗ってあげないとダメね。ガラスの方は細かいのは掃いたから
       大きいヤツを並べかえてくれると、てなちゃんが楽かも」

    首里「了解。久しぶりにジクソーパズルでもやるか。で、夕飯は何だ?」

    夕梨「お鍋。材料は水洗いして切ったから、後は煮るだけ。
       出来れば、ガスコンロとかも出して置いてくれると助かるかな」

    首里「へいへい。人使いが荒いことで、早めに出てこいよ。
       出ないと先に喰っちまうからな」

    夕梨「まー、そこまでは迷惑かけないよ。
       それじゃ、お願いね。てなちゃん、犬吉くん行こう」

    やれやれ。3人の後に続いて、俺も客間から腰を上げる。
    廊下を抜け、台所に着くと、コウモリが3匹こけていた。
    軍手をはめ掴み、起こさないよう、店の暗がりに寝かす。

    そして、2枚のガラスと向き合う。他にも何枚かヒビがいっていたが、
    そちらには手を触れない。しばらく熱中する。
    とはいえ、粉々に砕け散ったものを除けば20ピースのパズル。
    ものの5分で終わる。

    そうこうしているうちに店の中でキキィとコウモリが飛び立つ。
    これらのことを総合すると、夕梨は鍋の材料を死守しつつ、
    反対方向にコウモリを追い詰めた後、悲鳴をあげたらしい。


    夕梨・武装形態


    悲鳴と言っても、助けを求めるためではない。超音波を発射して、
    その反射によって飛行するコウモリの感覚を狂わせるために叫んだのである。
    勿論、通常の人間が叫んだ程度では、彼らには何の影響もないのだが、
    夕梨は普通じゃなかった。オペラ歌手がその歌声でガラスが割れたり、
    声優やアーティストの中には可聴域外の音声を発生させ、
    録音データにプチっという音が入ってたりする。その類の超能力。
    犬笛に近いかもしれない、それを俺はサイレント・ヴォイスと呼んでいる。
    魂が消えると書いて、「魂消る」という単語があるが、
    夕梨が本気を出せば、殺傷能力もある。
    コウモリが目覚めたことを考えなくても性格的に手加減したのは明白である。

    だとしても、分からないのは、マヨネーズ。丸々一本を噴出した空容器が残されていた。


    「ラギヨイ・アチントヤ~(3)宇佐見若葉」
    http://namiokasougo.blog.shinobi.jp/Entry/157/に続く。

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