SOUTH HILL RX5 DIARY

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http://namiokasougo.blog.shinobi.jp/Entry/155/　（02）大いに可なり　
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ラギヨイ・アチントヤ（11）　着信あり　（もしくはポリフェノール）


時刻は（朝）７時30分になろうとしていた。いつもなら帰宅は6時30分だけに
かなり焦っていた。だというのに、玄関に入る寸前でメール着信音が鳴る。
ひょっとして、土成くん？　と淡い期待をしたものの、
体調の悪い土成くんが、ＰＣを立ち上げて、メールを打つくらいなら、
直接電話をかけてくるだろう。つまり…

予想通り先ほど別れた夕梨さんからであった。気が進まないが見てみると。




　　谺夕梨　（大学１年生、巫女見習？）　　　　　　　　宇佐見若葉　（高校２年生：雲好き）


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ＦＲＯＭ　夕梨さん
　　　ＴＯ　若葉ちゃん


さっきは色々引っ張り回してゴメンね。若葉ちゃんのお母さんには
今夜、うちの神社の手伝いをしてもらうことになったから、
その打ち合わせで遅くなったということを伝えといたから。

お昼も蕎麦・野菜サラダ・果物・こんにゃく・昆布などを食べて。

それと、今夜は寝かせないから、学校にいる間、出来るだけ身体を
休めといて。出来れば、寝ておいた方がいいかも。

後、夕方にうちの神社に来る時は、シャワーを浴びて、

衣服は金物がついたものは禁止（ボタン・ファスナー・ブラのホック等）
夕食はご馳走するから、17時までには来て。

土成くんの家は如弥さんの方でも調べてくれるみたいだけど
若葉ちゃんの方でも調べといて。それじゃ、またね。

ＰＳ　今さらだけど、蕎麦アレルギーじゃなかったよね…△


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一通り眺めた後、携帯電話の画面を閉じる。
善意でセッティングしてくれているのだろうけど、
食事制限される理由を説明してくれないとモヤモヤしたままだった。
空は私の心を映したかのように、曇天から雨雲に変わろうとしていた。

玄関扉を開けると待ち構えていたお母さんは、
遅れた理由については、何も聞かなかったが、
お弁当を持っていかないのかと、しきりに心配してくれた。

私は、友達と学食で食べるという言い訳で何とか部屋に逃げ込み、
急いで制服に着替えて、髪もとかさずに家を飛び出した。

さて、学校まで歩いて５分もかからない。道中、夕梨さんのメールを再度
読み直す。神社に行く前にシャワーを浴びるのも日課だし
昼食が、蕎麦・野菜・果物中心のヘルシーメニューなのも、構わないけど、
「衣服は金物がついたものは禁止」というのは、少々困るかもしれない。

ボタンは木製なり、プラスチック製のものにすればいいし、
何ならパーカーやズボン（パンツ）系にすればいいけど、
ブラジャーにはホックやワイヤーといった金属部分がある。
あ、スポーツブラにすればいいのか。最悪水着ということも…。

それにしても、何故、私がこんなことで悩まなきゃいけないのか？
それよりも土成くんの家の住所である。連絡網には電話番号しか
記載されていない。先生に聞くのは、何故か、はばかれた。
誰か知ってないかな？

いけない、いけない、いつになくイライラしている。
心配からなのか、不安からなのか、雲でも見て落ち着きたいところであったが、
泣きだしたい私の代わりに、空が雨粒を降らし始めた。

８時。学校に着くと職員室に立ち寄り、先生に土成くんの遅刻を伝える。
すると、先生は土成くんの家から欠席の連絡があったと言った。

悪化したのかな…　と思っていると、土成くん自身の連絡ではなく、
父親を名乗る男性からだったらしい。いよいよもって、
お見舞いに行かなければならなくなった。勿論、嫌なわけではない。
しかし、自分の意志とは関係なく、誰かの思惑で事が進んでいるのが面白くなかった。

そーゆーわけなので、教室に向かってからも机の上に突っ伏していた。すると




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莉緒はバレーボール部。美鈴は軽音部（未定）。暦は囲碁部（もしくは将棋部）。
まー、劇中では、今のところ、その辺を描写する予定はありませんが。
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美鈴「うーさみん、おっはー。どーしたの、元気ないね。
　　　りおりお、その有り余る元気を分けてあげれば？」

莉緒「うっさい。鈴。それにしても…、おっす、うさ。
　　　　どした？　ちゃんと朝ご飯、食べてきたのか？」

暦　「２人とも、そろそろＨＲはじまりますよ。席に着いた方がいいのでは？」

美鈴「こよみん、冷たい。うさみん、心配じゃないの？」

暦　「若葉さんが体調を崩された時は、隣の席の私が保健室に連れて行きます。」


などと、心配されていては、うかつに寝てもいられない。
私は、ガバッと起き上がり、笑顔を作って精一杯の明るい声で親友達に答えた。


若葉「３人ともありがとう。私なら元気、元気。さー、先生来たよ」


先生が出席を取る。土成くんは当然欠席。分かっていたが、思わず溜息を漏らしてしまった。
教室の外は、次第に雨足が強くなり、窓に大きな雨粒が打ちつけ、
景色はにじみ、視界は歪んで見えた。

それから、何事もなく４限までの授業が終わり、昼休み。
３人がお弁当を食べようと机を並べ変え始めると、私は一人席を立った。


莉緒「およ、うさ？　トイレか？」

暦　「莉緒さん、直接的な表現は避けた方がよろしいかと」

美鈴「だったら私も一緒に行こう♪」

若葉「ううん、ごめん。私、寝坊しちゃってお弁当作ってこなかったの。
　　　だから、今日は学食に…」

莉緒「学食か、いいね。私らも行こうか」

暦　「そうですね。お供します。若葉さん」

美鈴「じゃ、私はお手洗い行ってから追いかけるから先に行ってて」

若葉「うん、席、取っておくね。」


という訳で、美鈴ちゃんを除く私達は学生食堂にやってきた。
お弁当を持たない私だけが食券を買って列に並べばいいはずなのだが、
何故か莉緒ちゃんもついてきた。
席は暦ちゃんが４人分確保してくれているので構わないのだけど。


莉緒「なー、ウサは何食べるんだ？」

若葉「えーと、おそばとおでんのこんにゃくと昆布と大根、
　　　　野菜サラダとフルーツゼリーかな」

莉緒「おいおい、何だ？　その精進料理！？　ご飯は？　肉や魚、卵はどうした。
　　　ただでさえ元気ないんだから食べないと昼から持たないぞ」

若葉「うん、ちょっと今日は食欲ないから」

美鈴「お待たせ。ねー、ねー、うさみん、クレープ食べようよ。
　　　春限定の苺ミルクレープ美味しいらしいから」

若葉「ごめん、苺は魅力的なんだけど、クリームとクレープが…」

莉緒「おかしい。何で、今日に限って、好き嫌いを言うんだ。うさ、まさか…」

若葉「え、違うよ。今日だけ。明日から、ちゃんと食べるから」

美鈴「まー、まー、りおりお、どー、どー。
　　　けど、何でクリームとクレープがダメなの」


仕方ない。私は夕梨さんからのメールを２人に見せた。


莉緒「なんだ、こりゃ。文句言ってやる」

美鈴「そーだね。ちょっと、これは酷いよね。
　　　うさみん、気にせず食べちゃえ」


そう息巻いてる２人から私の携帯電話を取り上げ、メールの文面を読んだ
暦ちゃんは、しばらく考えた後、私に質問してきた。


暦　「あの、若葉さん。この夕梨さんと言う方は、どーゆー関わりの人なのですか？」

若葉「えーと、大学生で、私が朝・夕、お日さまと月を拝ませてもらっている神社の巫女さんかな」

暦　「神社、巫女…。なるほど…」

莉緒「どーゆーことだよ、こよ。一人で納得してないで私達にも分かるように説明しろよ」

暦　「あ、いえ、私も全部が分かったわけじゃありませんけど、
　　　修験者の方が千日行（千日回峰行：断食、断水、不眠、不臥）に挑む前の１００日間の
　　　五穀断ちの際に食されるのものが、蕎麦を練ったものと、果物、野菜、蜂蜜だけというのを
　　　聞いたことがあるので」

美鈴「千日って、何年？　えーと１年が３６５日で。２年が７３０日だから、
　　　１０００ー７３０＝２７０日。１か月を３０日として２年９か月？
　　　うさみん、そんなことしたら身体に悪いよ。」

若葉「今日だけだから、大丈夫だって」

暦　「まー、いきなり、そーゆー食生活をしたら、健康を害してしまうかもしれませんが、
　　　行を終えた方から採取した血液や、生理的なデータは、尿酸、総たんぱくなど、
　　　いずれもほぼ正常範囲内で、脱水症状になってなかったそうです。

　　　尿を出す必要があるたんぱく質を減らし、代わりに脂質を蓄えれば、
　　　分解時に自然に水が体内でつくられるし、また、塩断ちに慣れると
　　　塩や汗を体外に出さない体になる※そうで、
　　　つまり、しばらくであれば外から水をとらなくても平気な体質に変わるのだとか。」


※　脂質が燃えると二酸化炭素と水が生まれる。一方たんぱく質だと
　　窒素も出るので、これは尿として体外に出さないと尿毒症になってしまう。


莉緒「そーいや、爺ちゃんが蕎麦を食べることが長生きの秘訣とか言ってたな。
　　　蕎麦にワインと同じ何とかっていう成分が老化を防ぐとか何とか」

暦　「ポリフェノールですね。他にも蕎麦には良質のタンパク質、
　　　特に重要なアミノ酸、リジン、トリプトファン、メチオニンが多く、
　　　さらにビタミンB群も豊富で、美容にもいいそうです」


ふーん…と言いながら、美鈴ちゃんが暦ちゃんから受け取った私の携帯電話の
メールを見直していた。そして、何故かポンポンと私の肩を叩き、他の２人にまた回覧していた。


美鈴「そっか、それで元気がなかったのか。全く、うさみん、いつの間に」

莉緒「あー、そーいや、昨日、うさ、誰かさんの自転車に乗って下校していたな」

暦　「そーいえば、今日はしきりに、どなたかの机を見て溜息をついておられました」

若葉「？　何？　３人ともその眼は」


それ以降、３人はニヤニヤしつつ、
どっかにいい男（ひと）いないかな…とか、それぞれ呟いていた。


http://namiokasougo.blog.shinobi.jp/Entry/229/　（12）バイクショップ野分　に続く